キートン山田さんと対談した
2021年3月で引退された声優・ナレーターの大先輩キートン山田さんと対談した。新旧のちびまる子ちゃんナレーター2人で対談させてもらえたなんて、本当にスゴいね。こんなのアニメの歴史でも他にあるかいな?ドラえもんくらいじゃないだろうか?
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キートンさんから、いきなり「今でも毎週日曜日はちびまる子ちゃん見てるよ!」と言われて、カキーン!と凍りついたワシであった。
もう見ないでくださいよ〜!特にナレーションの部分は早送りしてください。と必死になって言ったが、顔面は真っ赤だったと思う。いやはやアセったアセった
まる子ちゃん中心の生活
引退しても「ちびまる子ちゃん」がなかなか抜けないんだよ
そうキートンさんが言っていたが、その気持ちはワシにもよく分かる。なぜか?ワシも、いま一週間のスケジュールがちびまる子ちゃん中心に回っているのだ。同じ仕事を受けついだ人間同士だから言わなくてもその意味はひしひしと伝わってきた。
キートンさんは他にもたくさん人気番組を担当していた。「ポツンと一軒家」や「路線バスの旅」など、、、でもやっぱりお仕事の中心は「ちびまる子ちゃん」の収録だったという。特に精神的にまる子ちゃんが軸になるのだ!
それはどういうことか?
ちびまる子ちゃんは甘くない!
ということなのだ。
何年やっても気が抜けないプロの世界なのだ。全て声優の現場というのは厳しいのだが、ちびまる子ちゃんは特に厳しいと思う。(キートンさん勝手に代弁してすいません)
ちびまる子ちゃん現場の厳しさ
まず、音響監督さんがこまかい(笑)
ちびまる子ちゃんの音響監督さんは本田(ほんだやすのり)さんという大ベテランの人だ。この人のオッケーを取るのが非常にムズカシイ。
たとえば、「翌日」というセリフはワシになってからでも、もう100テイクくらい録っていると思うが、毎回きちんと録り直す。
「後半へ続く」とか、おなじみのキメ台詞でも毎回全部取り直す。しかも、監督の感性に1mmでも合わなかったら何度でもリテイクを繰り返す。
ベテランだから、まあいいでしょ、なんて甘えや妥協は一切ない。
←もちろん、キートンさんは30年以上ちびまる子ちゃんをやってきたのだから、ほぼいつもOKテイクを出していただろうが、ワシはまだまだド下手なので、毎回必死の録音作業をやっているんだ。
しかし!だ
めちゃイケもそうだった。めちゃくちゃバカなお笑い作っているが、ナレーションの精度などはコンマ何秒の正確さを求められていた。総監督の片岡さんがスタジオに来たときはいつも、サーっと温度が下がる緊張感があった。
だから「後半へ続く!」も毎回微妙に違うのだ。
大ベテランのキートンさんにとっても、ちびまる子ちゃんの収録というのは、毎週の中で中心となる、緊張感を持って立ち向かうお仕事だったのだろう。
それを31年も続けていらっしゃったのだ。本当にスゴいことだと思う。
声は枯れていく
ワシとキートンさんは大体20歳くらい年齢が違う。ワシは正直まだ老いというものがなんなのか分からない。ただ声に関しては人生の最高潮にいると思う。
でも絶対にいつか声は枯れていく
人間の声は張りを失っていく。落語や講談といった古典芸能は、その老いの中に人間の「味わい」を発見して楽しんでいる。声優にそれを作ったのがキートンさんなのだ。声優でも枯れた味わいの世界を切り開いたのがキートンさんなのだ。
これがいかにスゴいことなのかお分かりいただけるだろうか?
キートンさんの偉業
若い声優たちが、あと数十年経ったとき、ああキートン山田さんがこの道を切り開いてくれたから、私たちは枯れても声優が続けられるようになったんだ…と感謝する日が来るだろう。
インタビューでそのことを一番言いたかったのだが、紙面の都合上詳しく言えなかったので、ここにしっかりと記しておく。
アニメの神様、キートン山田さん、本当にありがとうございます。頑張って追いつけるように精進いたします。