ナレーターが舞台から学ぶこと
先日8月9日漫才師、木曽さんちゅう氏のご依頼で、漫才の舞台に立った。コロナで自粛のいま、開催が危ぶまれたが、木曽さんちゅう氏のご尽力で無事にイベントは開催された。

舞台の発声とスタジオの発声
ナレーターとして、こんなチャンスはない。なかなか無い。あなたも同業者なら一度やってみるべきだろう。
ナレーターじゃなくても、声優、歌手、など声にたずさわる人は、ぜひ一度はおやりなさい。
滅多に出来ない貴重な体験だ。
発声の違い
何と言っても、舞台の発声が全く違う。スタジオは防音設備がととのった静寂な空間だが、漫才は舞台だ。しかも演芸場なのだ。
スタジオでは「声の質」にこだわって録音ができる場所だが、演芸場は「声の質」なんか構ってられない。お客さんを笑わせる空間だ。
お客さんに届く声を出す!
これに尽きる

いつも、スタジオで静かにナレーションをしてる自分に、カツを入れる意味でも、芸人の世界に飛び込んでみることは非常に意味があると思う。
漫才にかけた青春!
又吉直樹くんの「火花」や、誰かの「漫才ギャング」など、漫才と青春をテーマにした、やたらとカッコいい映画が流行ったが、そういう世界を覗いてみたい気分もあった。
だいたい「相方」がいるというのも経験がない。相手との間、ツッコミのタイミング、話のスピード、これを2人でやるなんて、もう世界が違う。
ナレーションはいつも一人舞台だ。

じゃあ、2人組じゃなくて1人でピン芸人みたいに、笑いを取れるか?と言ったら、そりゃー無理だ。多分誰も笑ってくれないだろう。今回は、木曽さんちゅう氏が色々と苦心してくれたおかげでなんとかなった。

そんな私を、今回が初めての経験なので、他の芸人のみなさんもとても優しく迎えてくれた。これがとても嬉しかった。
本当はもっと「部外者」として壁があるものだろう?とも思うが、今回はみなさん優しく和気藹々とステージを盛り上げてくれた。感謝!!!

多くの、声優学校などが「舞台」の授業をやっているが、やはり本物の演芸場に出してもらうというのは、スゴい体験だ。
客席からの見えないオーラ
まず、明らかに違うことは、舞台は、お客さんからの反応がダイレクトにあることだ。
お客さんからの”風圧”を受けて、セリフがうまく言えなくなる。←こういうことはナレーションのブースでは体験できない、「生」の舞台ならではの貴重な経験だ。

科学的に証明できないが「人の気」というものは、しゃべってる人にかなりの影響を及ぼしてくる。
ある種のスピリチュアルな話だが、実際にあるからしょうがない。そういう目に見えない「気」が、舞台の良し悪しを左右するのだ。

観客の放つ期待感、嫌悪感、は相当なパワーで演技者の芸に影響を与える。
笑い声と拍手もヤバい
舞台に立って笑い声と拍手に乗せられると、かなり暴走する。だいたいネタは事前にきちんと作ってあって、言われたまま忠実にしゃべっているだけなのだが、笑い声と拍手に乗せられて思わずアドリブを入れそうになった。

いずれにしても、
すんごい経験だった。
いつもスタジオという「防音空間」でで仕事をしている我々が、あのようなノイズにまみれて、お笑いをするというのは、ちょっとない非日常経験だった。ナレーターが経験出来ないもの、それは 発声と客前

